人の心配には冷淡になるだろう、人の困る時には大きな声で笑うだろう。 ――それじゃ、さようならと独りで弁じて帰って行く。 　長火鉢の傍に陣取って、食卓を前に控えたる主人の三面には、先刻雑巾で顔を洗った坊ばと御茶の味噌の学校へ行くとん子と、お白粉罎に指を突き込んだすん子が、すでに勢揃をして朝飯を食っている。 もっとも汽車の方で留ってくれたから一命だけはとりとめたが、その代り今度は火に入って焼けず、水に入って溺れぬ金剛不壊のからだだと号して寺内の蓮池へ這入ってぶくぶくあるき廻ったもんだ その癖この姉はついこの間まで元禄と双六とを間違えていた物識りである。 　坊ばは隣りから分捕った偉大なる茶碗と、長大なる箸を専有して、しきりに暴威を擅にしている。 あらいやだ。 乱暴だな。 どこへ行くんだい。 ちっと馬鹿竹の真似でもなさい 叔父さんほど、寝坊はないんですから……そうして起こすとぷんぷん怒るのよ。 ちっと鈴木さんにでも頼んで意見でもして貰うといいんですよ。 じゃ君の名を公然とかいて送ったんだな 独仙の勢力もなかなかえらいよ