ZF52 [アンテプリマ] ANTEPRIMA 淡水パールフラワーモチーフつきネックレス TAPN0011 W1

多勢に無勢の問題になる。 うちの主人は時々手拭と石鹸をもって飄然といずれへか出て行く事がある、三四十分して帰ったところを見ると彼の朦朧たる顔色が少しは活気を帯びて、晴れやかに見える。 昔し希臘にクリシッパスと云う哲学者があったが、君は知るまい でも蒼いぜ、用心せんといかんよ。 現にこの不合理極まる礼服を着て威張って帝国ホテルなどへ出懸けるではないか。 だから衣服を着けない人間を見ると人間らしい感じがしない。 今度は何だ馬鹿野郎、人の桶へ汚ない水をぴちゃぴちゃ跳ねかす奴があるかと喝し去った。 しかし主人は決して、そんな人の悪い男ではない。 だから人間に対しては充分垣の功能をつくしているに相違ない。 これ即ち降りるのである。 ただ興味の薄い事には樹の上で口に啣えてしまわなくてはならん。 しかし蒲鉾の種が山芋であるごとく、観音の像が一寸八分の朽木であるごとく、鴨南蛮の材料が烏であるごとく、下宿屋の牛鍋が馬肉であるごとくインスピレーションも実は逆上である。 愚なるものは主人にあらず、吾輩にあらず、家主の伝兵衛である。 鳴く事を始めから予期して懸って、ただ打つと云う命令のうちに、こっちの随意たるべき鳴く事さえ含まってるように考えるのは失敬千万だ。